1.海上コンテナとは

海上コンテナ(Marine Container) の略称は海コン。業界の俗称はハコ( 箱)。海を挟んで発荷主から着荷主への輸送費を安くする手段として登場した。
港において大きな箱の海コンを積み替える作業で、個々の荷物の荷積み荷降ろし作業を無くした。効率の悪い人海作業を無くし高速な重機作業に置き換えた。荷物の破損、窃盗、紛失、など諸々の問題を解消した。
(沖合に停泊する船舶から、はしけを使って貨物を陸揚げしたり、その逆に積み込んだりする作業を行う人夫「沖仲仕」の仕事が、「波止場」の言葉が、海コンによって消失した。)
2.発明したのは

海上コンテナを発明したのは米国人のマルコム・マクレーン。(隅金具も発明した)。20世紀最大の発明と言われる。海を挟んだ大陸間輸送において、人海戦術を前提とした従来の貨物船を駆逐して、コンテナ船が主役の座を確立した。

海上コンテナについて、より詳しく知りたい方は、「輸送コストの大幅低下がグローバリゼーションへの道を拓く必須条件だった」と書く著者マルク・レビンソン氏の「コンテナ物語」の購読を推奨します。
更に掘り下げて知りたい方は、下記の動画もご覧下さい。
コンテナ物語世界を変えたのは「箱」の発明だった、2025/3/02、YouTube
コンテナ輸送の歴史を解説しました!
The Box – コンテナ物語、2021/4/05、Youtube
3.変遷と現状

当時の道路事情で35フィートの長さで登場した。各社がそれぞれの長さで参入したが、後にISO(世界標準化機構)で20と40フィートに規格統一された。その後、高さで8.6 に加えて9.6 フィートを追規格。長さで45、48、53フィートを追規格。
海コンは、アジアと米国西海岸、アジアと欧州、など海上輸送をコンテナ船で運び、海コンをシャーシに載せてトラクタで牽引して港と荷主の間を陸上輸送する。海運会社と荷主の輸送料金は、段ボール箱単位の輸送と同様に、海コン単位で、海コン内の荷物の多寡は問わない。
段ボール内の荷詰め荷解きに携わらない同様に、海コンが輸送単位であるから、陸運会社は海コン内の荷積み荷降ろし作業にタッチしない。
海運会社所有の空の海コンを、港で陸運会社所有のシャーシに載せ発荷主に行き、発荷主が荷積みし扉に封印した後に、陸運会社が港の輸出置場に運ぶ。港の輸入置場から陸運会社が着荷主に運び、着荷主が封印を解いて中の荷物を全て取り出す。空になった海コンを陸運会社が港に返す。
4.海コンの特徴
海コンは、A地点からB地点に纏まった荷物を運ぶ1対1輸送に使い、ほとんどが長距離です。宅配便など小口荷物を近隣で次々とお届けして行く1対Nの配達、近隣で荷物を次々と集めて行くN対1の集配、などの配送は不向きです。そもそも全長12mの海コンを牽引して狭い路地は走れません。
- 運搬荷物は直方体の頑丈な1つの大きな箱
箱の中の荷物の荷積み荷降し作業、荷物内訳や損傷の確認は荷主間の事項、陸運会社側はノータッチ。ミニチョコをバラで100万個、50個入り2万袋、40袋入り500箱、500箱入り海コン1箱。大きい事は良い事。公道輸送で特別許可申請不要(国土交通省の説明)のほぼ最大サイズ、の海コンが輸送に最適は自明。 - 沢山の荷物を積める
海コンは荷箱の容積と積載重量が大きい(沢山の荷物を運べる)。大型トラックの荷箱の長さと高さと最大積載量は9m✕2.6m✕12トン、海コン40FHは12m✕2.9m✕26トン。容積と積載重量が大きいと2台が1台で済む場合がある。長尺物を運べる。 - 個々の荷物の途中の積替えなし
陸海陸輸送において、陸運会社のコンテナターミナルでの、ターミナルとコンテナ船での、積み降ろしで海コン内の荷物の積替えなし。港の岸壁の大型クレーンで海コンを船に積み降ろして、積み降ろし作業の機械化と高速化、作業員の大幅削減、危険作業の回避。 - 海コンは世界共通規格
海コンは箱の大きさだけでなく、上下4隅の隅金具の形状も穴位置も世界共通規格。ガントリークレーンで海コンを吊り下げて世界中のコンテナ船に積み降ろしできる。シャーシに載せてツイストロックで固定して道路走行できる。共通規格の海コンだから、自動化した工場で低コストに大量生産できる。 - 隅金具が海コンのキモ
海コンは単なる大きな箱ではなく、上下4隅の計8個の隅金具に、鋼鉄の柱と梁を溶接した骨構造(ラーメン構造)の箱。8~10段に積み重ねて露天および荒海の船上に蔵置できる。隅金具と柱と梁の骨構造で、上に重ねた多段の海コンを支え、下の海コンの上に乗る。海コンを吊り下げる。海コンを牽引車両シャーシに固定する。もし鋳鉄で作った肉厚の隅金具が無ければ海コンの多段積み、吊り下げ、車両上の固定も困難になる。海コン輸送が崩壊する。 - 隅金具とツイストロックはベストパートナー
海コン側の隅金具と、締結側のツイストロック、のコンビで海コンを簡易に確実に素早く固縛解放できる。隅金具の挿入穴の面取り、ツイストロックの三角錐形状により、多少の位置ズレもセルフアライメント(自己位置調整)し、スッポリと穴に入る。


4.1>海コンの長所(Wikipediaより転載)
- 輸送中の水濡れなどの事故が少ない。
- 特殊な積荷以外では梱包材をほとんど必要としないので、低コストであり環境にやさしい。
- コンテナ自体の寸法が規格化されており、内容物によらず同じ手順で荷役作業が行える。
- 輸送機関同士での積み替えが簡単かつ迅速に行えるため、時間と費用の両面で従来手法に対して、圧倒的に有利となる。
- 丈夫な金属製の箱は長年にわたり繰り返し使用できるため、梱包コストが削減できる。
- コンテナ自体の強度が高いために、コンテナ船では10段以上の積み重ねができ、搭載や保管のための場所が節約できる。
- 貨物の性質にもよるが、コンテナに入れたままで短・長期間の野外保管が可能で、屋根付き倉庫などを必要としない。
- 海上輸送で従来、甲板積みができなかった貨物も輸送可能となる。
- コンテナ登録番号や封印施錠などで、輸送中の国際的な一貫管理により、盗難や不正輸出入のリスクが少ない。
- ドア・ツー・ドアの一貫輸送が可能となる。
- コンテナ自身の素材である鉄・アルミニウムも再利用が可能で、環境にやさしい。
4.2>海コンの短所(Wikipediaより転載)
- 荷降ろしの終わった空コンテナを回送する時には、コンテナ自身の重量を運ぶエネルギー消費が無駄になり、コストに加算される。
- 小口の輸送ではコンテナ1つを埋められず、費用空隙の効率を求めれば多種類または複数の荷主もしくは、その両方の荷物を混載する手間がかかる。
- 気温の違う地域間を長距離輸送するときには、汗濡れ損害や蒸れによる損害が発生しやすい(通風の不足または、積載貨物にとってコンテナが不適当から生ずる損害)
- 港湾に専用のガントリークレーンや、規格に適合したトレーラーなどの大型の荷役機械の整備が必要となり、莫大な投資が必要となる。
- コンテナの出発地や到着地に近い港でも荷役設備がなかったり、たとえその設備があっても使用するコンテナ船の寄港ができる港湾内の航路の水深が十分でなければ、遠くても設備や条件の整った港まで運ばなければならない。
- 貨物を抜き取る小規模な窃盗が減った反面、コンテナごとトレーラーなどで運び去る大規模な窃盗被害はありうる。
- 銃器等や麻薬など、特に輸出入を禁止している物の臨検が、コンテナの床や柱、あるいは妻壁を巧に利用し隠されてすり抜けられ、不正輸出入を摘発できないことがある。
- 長持ちする日本車や建設機械が盗まれ、ヤードと呼ばれる闇の解体工場で小口に分解し、車体製造ナンバーの付かないパーツとしてコンテナに詰め込んで不正に輸出する。
- さらに、税関手続きの盲点を付いて人気の盗難車を他のダミー車両とすりかえて、正規の手続きを取る新手の巧妙な手口なども発生している。
- 密航者が中に詰め込まれて不法入国する。
5.海コンの仕様
- 名称:日本語:インターモーダルコンテナ、通称:海上コンテナ、略称:海コン、俗称:ハコ(箱)
英語:intermodal container, 通称:Marine Container, 略称:「CN」や「CT」 - 規格:ISO(国際標準機構)、JIS(日本産業規格)
- 種類:ドライ、リーファー、タンク、など多品種
(但し、ドライが9割以上で大部分、次点がリーファーで少数、他種は僅か) - 長さ:20フィート(20F=6.058mm)と40フィート(40F=12,192mm)の2種類
(45、48、53フィートがISO規格に追加され少数が流通) - 高さ:8.6フィート(8.6H=2,591mm)と9.6フィート(9.6H=2,896mm)の2種類
(長20x高8.6、長40x高8.6、長40x高9.6の3種)
(長20x高9.6は殆ど無い)
(リーファは長20x高8.6、長40x高9.6の2種)
高さ9.6フィートはハイキューブと呼び、扉に黄色の▲マークが印刷してある - 横幅:8.0フィート(8.0W=2,438mm)の1種類
- 内容量:【ドライ、20F8.6H=33.1m3、40F8.6H=67.6m3、40F9.6H=76.2m3】
【リーファー、20F8.6H=28.2m3,40F9.6H=67.5m3】 - 自重:【ドライ、20F8.6H=2,200kg、40F8.6H=3,740kg、40F9.6H=3,830kg】
- 最大積荷重量:【ドライ、20F8.6H=28,280kg、40F8.6H=26,740kg、40F9.6H=26,650kg/28,670kg】
- 最大総重量:(自重も含めたコンテナ全体の制限重量)
【ドライ、リーファー、20F8.6H=30,480kg】
【ドライ、リーファー、40F8.6H、40F9.6H=30,480 kg/32,500kg】 - 材質:外板と扉:スチール(鋼板)、隅金具:鋳鉄、床:木材
- 積重段数:8~10段(各段毎の重量によって変わる)
注記:⑦内容量~⑨最大積荷重量は製造会社によって微妙に異なります。
6.海コン追加説明のリンク先
海コン持上装置は海上コンテナを「単に」持ち上げ持ち下げする装置。日本国内の陸々輸送に海上コンテナを使う長所短所は、海上コンテナそのものが持つ長所短所で生まれます。本サイトは海上コンテナの深堀りが目的でないので、深く理解したい場合は下記のリンク先を参照して下さい。
- 海上コンテナ、Wikipedia
- 海上コンテナの種類とサイズ、 商船三井ロジスティクス
- 物流コンテナ、実は「中国が製造シェア98%」のなぜ、2023/8/14、東洋経済オンライン
- 中国が牛耳る「コンテナ製造」 シェア“ほぼ100%”も、2023/5/20、Merkmal
- 日本を輸出大国にした「コンテナ」知られざる凄さ、2023/4/07、東洋経済オンライン
- How Shipping Containers Are Made、2011/9/15、YouTube
- コンテナの種類、海コンが運搬するコンテナの種類、2021/4/04、YouTube
- 貿易・海上輸送に使うコンテナについて解説、2021/4/08、YouTube
- 国際海上コンテナ車(40ft背高)特殊車両通行許可不要区間について、国土交通省