陸運会社

目次

1.輸送と配送

 運送は輸送と配送、すなわち『運送=輸送+配送』です。輸送は2点間の1対1運送で長距離が多い。配送は『配送=配達+集配』。1対Nの配達とN対1の集配で、短距離が多い。
 海コンを使った陸々輸送では、一度に大量の荷物を運ぶ輸送業務の陸運会社を対象とします。宅配便など身近な配達と集配の配送業務の陸運会社は対象外です。

2.陸運会社の請負範囲

 海上コンテナを道路輸送する陸運会社は、●トラクタ略称:ヘッド、俗語:頭)と●海上コンテナ専用トレーラ略称:シャーシ、俗語:骨)を所有し、海運会社または荷主所有する海上コンテナを、シャーシの上に載せ固定して輸送する。
 海上コンテナ輸送では、海コン輸送のみが陸運会社の請負範囲。海コンの中の荷物の積み降ろし、すなわち荷役はやらない。(荷役ないから70歳を過ぎても海コン運転手を続ける人もいる)。コンテナ船で海上輸送する陸海陸輸送の陸上輸送(海コン内の荷物積み降ろしは最大2時間内、以降追加待機料金)でも、日本国内を陸上輸送する陸々輸送でも、請負範囲は変わらない。
 海上コンテナ内の荷物の積み降ろしは荷主の責務。コンテナ船で運ぶ陸海陸輸送でも、日本国内の陸々輸送でも、荷主の責務。海コン内の荷物の損傷や数量不足などのトラブルに巻き込まるから、陸運会社の運転手はこの作業にタッチしない。荷主は機械化や省力化に投資し、陸運会社の運転手の労働環境は向上する、でしょう。

3.荷待ちと拘束時間

荷待ちはなぜ起こる

質問:荷待ちはなぜ起こる?
答え:荷主が荷主側の荷姿(例えばダンボール箱)で荷物を出して来るから。
解決策:荷主が世界共通規格の荷姿(40F海コン)で荷物を出す。

拘束時間はなぜ長くなる

質問:拘束時間はなぜ長くなる?
答え:荷待ちが起こるから。
解決策:荷主が世界共通規格の荷姿(40F海コン)で荷物を出す。

 運送会社の車両運行で荷待ちと拘束時間は重要な検討事項。荷待ち時間が長いと車両回転率が悪化し運行コストが増える。拘束時間が長くなると労働時間の上限から宿泊輸送が必要になり、輸送コストが激増する。運転手の手配や確保求人が難しくなる。
 荷待ちは、発荷主に到着し荷物を積み構内から退出するまでの時間(の大部分)、着荷主に到着し荷物を降ろし構内から退出するまでの時間(の大部分)。到着から自分の積み降ろしが始まるまでの順番待ちと積み降ろしが完了するまでの加算時間。長くなると、道路走行費用を含む総輸送費に占める比率が増える。運送会社として可能な限り短くしたい。
 狭義の拘束時間は運送会社を出発して運送業務を終了し帰社するまでの時間。拘束時間が運賃に関係する。拘束時間が労働時間の制限に関係する。広義の拘束時間には荷主の着時間指定確定までの運送会社内待機時間も含む。

4.2024年問題

4.1>2024年問題

  • 特例廃止
     2024年4月から運送業の残業規制が特例廃止となり、運転時間の減少で物が運べなくなると大騒ぎ。需要が有れば供給が有る訳でマスコミの煽動でした。
  • 荷待ち時間の解消
     その中で焦点が当たった項目が荷待ち時間の解消。広義の荷待ちは、到着車両の順番待ちと、荷物の積み降ろし完了までの時間。荷物を降ろし終わって運送業務の終了退出まで到着から最悪2や4や6時間が経過。立場の弱い陸運会社が可哀想だから強い立場の荷主は人員を増やせ!と。
  • 自由競争
     到着する車両、受領発送する荷物、に波があり、ピークに合わせて人員を増員すると閑散時間帯に人員が余る事になる。荷主のコストが上がり同業他社との競争に負ける。
  • 行政のアリバイ作り
     行政が主導して前日予約制をテスト導入。一日の荷物の積み降ろし作業工程を前日に正確に荷主が予測するのは不可能。作業員は病気をするし、身内の葬儀に参列する。
     交通渋滞や事故で車両の到着時間を陸運会社が正確に予定するのは不可能。事故渋滞等で予約時刻に車両が到着しなければ作業に穴が開く。積み降ろしする荷主側が困る。陸運会社に責任が発生するから2時間前や4時間前に到着しておく。
     個別事情にも寄るが、予約制よりも緩衝を持つ先着順が現状では妥当に見える。
  • 費用対効果
     そもそも大きな変革、大きな費用の投資、を必要としない改革は各企業で逐次進められているはず。労働時間の上限を一律に制限する働き方改革はアジア各国の追い越しを招き、日本が貧国へと落ちぶれて行く。働く時間を短くして陸運会社を運営して行くには、荷主負担での運賃値上げとなる。
  • 解決策は海コン移行投資
     運転手の働く時間を短くしつつ、運賃を値下げするには、一度に運ぶ量を増やす、待ち時間を無くす、などの荷主投資が必要。大型トラック輸送を海コンのトレーラ輸送に移行が、この2課題の唯一の解決策。陸運会社は荷主の変化に適応する立場。陸運会社に主導権はない。荷主が投資しなければ運賃値上げを荷主が容認する事になる。自明の理。

    注記:
     高速道路の大型区分の全長12m(荷箱9m)大型トラックを、特大区分の全長15~16m(海コン箱12m)牽引トレーラに移行すると、高速道路料金が1.6倍に増加します。
     2024年問題の対応策として、輸送費低減には一度に運ぶ量を増やすが効果的ですが、高速料金が増えてしまいます。海コン牽引トレーラを大型区分にする特例扱いを、あるいはセミトレーラまでを大型区分に拡大を、国、国土交通省に要望します。

4.2>AIによる解答

★AIの概要
 「2024年問題」とは、2024年4月から物流業界のドライバーに時間外労働の上限が設けられることにより、物流の停滞、金利の上昇、ドライバーの収入減少や不足、結局は商品価格への転嫁、配送サービスの低下などをやがて可能性がある問題です。 働き方改革関連法が施行されたことで、年間の時間外労働が960時間に制限され、ドライバーの労働環境改善が行われていますが、これまで長時間労働で真面目だった物流システムに大きな影響を与えています。

★主な内容

  • 時間外労働の上限規制:業界のドライバーの時間外労働物流が、年間960時間に制限されました。
  • 拘束時間の短縮:労働時間と休憩時間を合わせた拘束時間の短縮も義務付けられました。
  • 物流機能の低下:ドライバーの労働時間がかかることで、一人当たりの配送距離や量が減少する可能性があり、物流全体の能力が低下し、モノが運べなくなる状況が懸念されています。
  • インフレの上昇:コストの増加に伴い、運送会社の運賃が上昇し、最終的には商品価格に転嫁される可能性があります。
  • ドライバーの収入減少と人材不足:時間外労働の削減は、ドライバーの収入減少につながりかねず、さらに人手不足が深刻化すると見られています。

★影響

  • 運送・物流業界:売上減少、収益悪化、人材の流出・不足といった問題を抱えています。
  • 荷主・消費者:配送スケジュールの見直し、運賃の上昇、商品価格の上昇、そして翌日配達などの最適性の低下が考えられます。
  • 社会全体:物流機能の低下は、部品や製品が生産・流通できなくなる状況を覚悟し、経済活動全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

★対策

再配達の削減:消費者への正確な配達情報通知、宅配ボックスの普及、コンビニエンストアでの受け取りなど、多様な受け取り方法を提供することで、運送コストの削減に貢献します。

DXデジタルトランスフォーメーション)の推進:トラック予約受付システムの導入、AIを活用した共同輸送、配送ルートの最適化などにより、業務の効率化を図ります。

労働環境の改善:有給休暇の取得促進、福利厚生制度の充実により、ドライバーが働きやすい環境を整備し、人材の確保と確保を図ります。

4.3>国の検討内容と作成冊子

 国の検討内容とアウトプットとしてのガイドラインのリンク先を掲載しておきます。海コン輸送がない時点での対応策を多面的に検討。海コン輸送があっさりと解決する課題が沢山あります。

★協議会での検討内容
 「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」で検討。
★作成したガイドライン
 厚生労働省労働基準局労働条件政策課、国土交通省自動車局貨物課、公益社団法人全日本トラック協会、の3者による、『荷主と運送事業者の協力による「取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」』のPDF冊子(52ページ)。
★作成したガイドライン事例集
 国土交通省中部運輸局が、「トラック事業取引環境・労働時間改善応援サイト」を開設。こちらの「取引環境・労働時間改善のヒント」のページに掲載の事例集を利用ください。

5.トラックと海コンの輸送比較

5.1>トラック輸送の利点

  • 大中小の車両サイズを選べる
     トラックは、運ぶ荷物の量に合わせて小型、中型、大型、特大の中から最適を選べる。
  • 片道で輸送完結
     車台と荷箱が一体固定のトラック輸送は、荷箱の中の荷物を運ぶビジネスモデル。A地点からB地点に運んだら輸送請負契約終了。B地点で次の輸送の仕事が始まる。
  • ウイングトラックがある
     荷台の両側面が鳥の翼のように開閉する構造のトラック。後扉から遠い荷台の奥も、横からフォークリフトで荷物の積み降ろしできる。

5.2>トラック輸送の欠点

  • 荷積降待ちが発生する
     車台と荷箱が一体固定のトラック輸送は、荷箱の中の荷物を運ぶビジネスモデル。車両到着後に荷積み荷降ろし開始。完了まで荷積み荷降ろし待ちが発生する。
  • 到着車両の順番待ちが発生する
     始業開始直後など荷届け車両集中の時間帯がある。積降作業員の適正数があり、輸送車両の順番待ちは必要悪。そもそも悪でなく合理的。
  • 翌朝翌週の夜間休日待機が発生する
     車台と荷箱が一体固定のトラック輸送は、荷主の業務時間内に、荷箱の中の荷物を積み降ろしする制約がある。すなわち、業務時間を過ぎれば翌朝翌週朝までの夜間休日待機が発生する。高速道路の駐車場の夜間混雑はここに原因の一端がある。輸送費コスト上昇の一因でもある。
  • 車両の道路走行率が悪化する
     ①②③により運送会社車両の道路走行率が悪化する。これらの待機時間を費用項目として荷主に請求できず、運送会社は輸送費総額に組み込み、実際には、これらの待機時間の費用を荷主は払っている。
  • 荷積降担当が不明瞭
     輸送契約決定時点で、トラック荷積降担当が、荷主側か、運転手側か、明確でない場合がそこそこに有る。運転手が現場に到着した時点で、「これ積んで持って行ってね」「ここに降ろして置いてね」で運転手担当と判明する場合もある。
  • 車両稼働率が低くなる
     トラック運送会社は、運ぶ荷物の量に合わせて小型、中型、大型、特大。荷台形状で、平ボディ、バン、クレーン付き。サイズ、形状を揃えて荷主顧客の要望にワンストップで答えようとすれば、所有する車両の種類と総台数が増える。駐車場面積も増え、保管費用も増える。1台毎の稼働率が低くなる。
     実際には友好運送会社で相互に運送委託し合う孫受けひ孫受けで対応する。1件の利益が減るが、車両保有コストを節約できる。
  • 見積書作成、配車が複雑怪奇
     トラック輸送では輸送する荷物の種類と数量を聞き取り、詰め込む荷物を容積計算し、輸送に使う車両サイズを選択決定する必要がある。
     トラック輸送では運送会社の所有車両内訳は種々雑多。運転手の所有する免許の種類、それぞれの出勤日と空き車両の組み合わせなど、煩雑な配車プランは長年の経験が必須となる。

5.3>海コン輸送の利点

  • 荷積降完了待ちがない
     車台と荷箱が分離する海コン輸送は、(中に荷物が入った)海コンを運ぶビジネスモデル。荷積完了の海コンを載せて出発。荷積の海コンを降ろして輸送業務完了。海コン内の荷積降完了待ち無し。
  • 荷上がり変動に強い
     例えば荷積完了予定時刻の2時間後に運送会社が海コンを引き取りに来る体制だと、生産遅れが2時間内の遅れなら、荷待ちが発生しない。
  • 車両の順番待ちが発生しない
     車両の順番待ちは、業務開始直後など、殺到する到着車両数に対して、積み降ろしの場所や人員の不足により発生。
     海コンを運送荷物として受け渡す海コン輸送では、海コン持上装置での短時間上げ下ろし、夜間早朝など就業時間外のお届け引取などにより、到着車両の順番待ちがほぼ発生しない。
  • 翌朝翌週の夜間休日待機が発生しない
     車台と荷箱が分離する海コン輸送は、(荷主の事前承諾、事業所守衛の当日承諾の上で)荷主の業務時間外の未明早朝昼休み業務終了後夜間に、海コン持上装置を操作して、輸送受諾荷物としての海コンを引取お届けできる。
  • 車両の道路走行率が向上する
     ①②③4により運送会社車両の道路走行率が向上する。これらの待機時間の消失費用を荷主と折半すれば双方がWin-Win。荷主側の海コンと持上装置の輸送投資だから荷主の取り分が多いかな?全部かな?
  • 荷積降担当が明瞭
     海コン輸送では契約記載なくても荷積降担当は荷主側。海コン内の荷物の損傷や数量不足などのトラブルに巻き揉まれるから運転手は手伝ってもいけない。全世界共通だから荷主側が運転手に指示する事はできない。
  • 所有車両稼働率が高くなる
     海コン輸送では運送会社の所有車両は、シャーシ牽引用のトラクタヘッド、頭)と、(40フィート海コンを載せる)40フィート用シャーシの2種類。荷物の種類や量の多寡に応じてめったに使われない車両を揃えなくて、トラクタとシャーシの2種類だから、所有車両稼働率はすごく上がる。車両保管のスペースと費用も節約できる。
  • 見積書作成、配車が楽
     海コン輸送では運送会社が輸送する荷物は海コン。荷箱内に詰め込む荷物の容積計算や輸送に使う車両サイズを選択決定する必要がない。輸送する日時と輸送地点A~Bが分かれば長年の経験が無くても見積書が作成できる。
     海コン輸送では運送会社の所有車両は、トラクタシャーシの2種類。所有する車両の内訳と運行予定、運転手の所有する免許の種類、それぞれの出勤日組み合わせなど煩雑な配車プランが要らなくなる。

 

5.4>海コン輸送の欠点

  • 大中小の車両サイズを選べない
     大中小の車両サイズを選べないのは事実であるが、40フィート海上コンテナ(標準高8.6F、または背高ハイルーフ9.6F)を択一で使う海コン輸送は、そもそも中小の車両サイズの中小量の輸送は眼中に無い。
  • 片道で輸送完結しない
     車台と荷箱が分離する海コン輸送は、荷箱の海コンを運ぶビジネスモデル。A地点からB地点に運んだら輸送請負契約終了し、運送会社はB地点で次の輸送の仕事が始まる。
     しかし、海コンの所有は荷主。B地点からA地点に海コンを戻す輸送を発注する必要が生じる。すなわち、(マッチングビジネスが存在しない現状では)、自前または他社協同で往復輸送が確保できる場合のみ、海コン輸送が利用できる。
  • 両側ウイング開閉型が無い
     海コンは妻側一面にしか扉が無いから、横からフォークリフトで荷物の積み降ろしできない。但し、持上装置で床に下ろせるから、フォークリフトで海コンの中に入って荷積降作業して下さい。

 

6.陸運会社追加説明のリンク先

 下記は「トラ吉TV」さんのYouTube動画です。輸出入でコンテナヤードと荷主の間の輸送業務、すなわち陸海陸輸送での説明です。日本国内の陸々輸送では、コンテナヤードを介在しないので、この点を考慮して動画をご覧下さい。

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